紙の本と電子書籍

「電子書籍が紙に負ける5つのポイント」を読んで

2011年6月6日。

先日、Amazon・Kindle向け電子書籍が、販売部数で紙版を超えたというニュースが出ていたが、昨日〈電子書籍が紙に負ける5つのポイント〉という記事が出ていた。

①読了へのプレッシャーがない

→これに関しては意味が分からない。

では紙の本は読了にプレッシャーがあるのだろうか?

②購入した本を一カ所にまとめられない

→こちらは以前から言われているし、自分自身も電子書籍を利用している上で強く感じる。

③思考を助ける「余白への書き込み」ができない

→こちらは紙の本でも自分自身は書き込みをしないため、同意は出来ないが、紙の本でしていた人は同感なんだろう。

ただ、書き込みが出来るリーダーや電子書籍はあるし、今後さらに増えていくと思う。

④位置づけとして使い捨てなのに価格がそうなってはいない

→これに関しては後で詳しく述べたい。

⑤インテリア・デザインにならない。

→こちらに関しては、私自身はインテリアだと思ったことはないが、例え多くの人にとって紙の本がインテリアだとしても端末の中の本棚に並べることは出来るし(②の問題はある)、本棚がいらない・持ち運びが簡単・重くないなどのメリットに比べて負けると言えるのだろうか?

紙の本と電子書籍、どちらにも強み弱みはあるだろう。

もちろんそれは人それぞれだが…

最近メディアなどにも取り上げられる機会は増え、ご存じの方も多いと思うが、そんなメディアの情報なども引用しながら、まずは簡単に電子書籍の現状を。

電子書籍市場の現状

出版業界全体で言えば、まだまだ電子書籍の売上なんて、紙版の5%~10%と言われている。

それでも、2010年に倒産した出版業者44件、書店経営者業31件、印刷業者153件。

=上記に関して、特に書店に関しては、電子書籍の誕生が理由だとは思わない。

例えば、紙の本の新刊は増え続けていて、2000年で67,522タイトルだったのが、2010年で78,555タイトルに上っている。

それこそ、出版不況を示す数字だと思う。

また、以前にも書いたが(【電子書籍市場とそんな時だからこそ】【起業初月を終えてと電子書籍】)、雑誌業界で言えば、1997年から13年連続で減少という数字が出ている。

2010年の電子書籍市場全体は約640億円で、出版業界全体の市場規模は約2兆円(※推定1兆8,748億円)=それに比べれば、まだ10%にも届いていない。

冒頭の④、〈位置づけは使い捨てなのに価格がそうなってはいない〉に関しても言えることだが(※使い捨てなのには意味が分からないので触れない)、電子書籍の方が安くあるべきだということに関しては、確かに電子書籍には在庫を抱えるリスクも無く、紙の本では著者10%・出版が30%・印刷が30%・取次8%・書店22%というような割合だったが、印刷などがいらなくなるのだから、単純にその分安くなると考えるのは当然だ。

だが上述したように、電子書籍自体、販売部数は紙版の10%にも届いていない現状で、安く読者に届けていることを評価するべきだと思うぐらいだ。

今時点で、電子書籍が紙版に与える影響は少ない。

今の現状で言えば、スマートフォンやタブレット端末を持っている人でも、読書の選択肢が増えたという感覚ぐらいだと思う。

電子書籍市場予測とAppStore

以前に書いたことだが、むしろ電子書籍市場はこれからだ。

予測ではあるが、電子書籍市場は2014年頃には国内映画興行収入(2,207億円※2010年度)を超え、2015年には約3,500億円になるという予測も出ている。

だからこそ、冒頭の②のような問題も指摘されているし、AppStoreでの問題もある。

これは個人的な予想だが、6月4日に文藝春秋の〈プリンセストヨトミ〉という無料版・有料版二つの電子書籍アプリがリリースされたのだが、こちらの映画の公開日を見ると5月28日だった。

普通に考えて、本当は無料版は映画公開前を狙っていたのではないかと思った。

もしかしたら私の考え違いかもしれないが、AppStoreの申請に関しては様々なところから不満が出ている。

それは結果、作者だけでなく読者のデメリットになる。

AppStoreの申請基準に関しての、通るか通らないか分からないというのは、ビジネスではないと思う。

例えれば、商品を注文して「注文はお受けしますが届くか届かないかは分かりません」と言われているようなものだ。

電子書籍は流通、印刷コストが不要=低コストと言われているが、その書籍を創るコストはかかっている。

無料の電子書籍だって、広告収益で成り立たせていたとしても、その書籍を創るコストはかかっている。

それが通るか通らないか分からないでは困るのは当然だ。

例えば新商品販売前に広告用としてリリース予定のものが、審査によってリリースが遅れた場合、その広告用アプリの存在意義が無くなる恐れもある。

冒頭の②に関して言えば、そういった点も理由として挙げられると思う。

また、出版業界は音楽業界で起こったことと、同じ革命が起こることを恐れているというのもあると思う。

だから、iPod誕生の時と同じように・同じスピードでは進んでいないのだと思う。

だが、電子書籍は素晴らしい。

例えばiPhoneでは、欲しいコンテンツが揃っているかは別として、本屋さんにいなくても、欲しいと思った瞬間に購入することが出来る(20MBを超えるものはWiFi環境が必要)。

検索機能が付いている書籍もある。

それに、上述したが、紙の本が無くなる訳ではなく選択肢が増えていくのだ。

それを読者が拒む理由はあるだろうか?

まだまだ問題点はある。

だが、だからこそ、この市場のこれからにワクワクする。