理想と現実 【創業前にメンバーの一人が離脱】

理想と現実

2009年11月1日。

起業に向けて動き始めてから、初めて立ち止まった。

立ち止まっている場合じゃないことは自分自身が一番分かっているつもりだが…

金曜日の時点で湧き上がってくる感情が、怒りなのか悲しみなのか悔しさなのか何なのかも分らなかった。

3人での

2009年10月30日(金)、月末会議が終わり、事務処理等をしていた時に内村から電話があった。

「メール見た?」

その言葉にすぐにメールを確認すると、鈴木から<謝罪と報告>という件名のメールが入っていた。

結論から言うと、この日鈴木が起業への参画を断念した。

理由は子連れ女性との結婚を決意し、それによって今の安定を捨て、起業というリスクを背負う勇気が持てなくなったこと。

「二人の貴重な時間を自分のために使ってもらうことが申し訳ないから」 という理由が書いてあったが、ビジネスパートナーの前に、親友として直接言ってほしかったし、「今は二人に会う勇気がない」という言葉に理解が出来なかった。

最後に「お互い体に気をつけて頑張ろう」という言葉に、友人関係までもやめようとしているのかとも感じた。

内村が「今から会いに行く」と言ったが、正直私も直接会いたい気持ちはあったが、まだ会社だったことと、私達から会いに行くことに疑問もあった。

結局自宅にいた内村が鈴木と会い、その後鈴木が飲み会だということで、その後私と内村で合流した。

鈴木と話してきた内村から最初に出た言葉は「俺のせいだと思う」という言葉だった。

「プレッシャーを与え過ぎたんだと思う」と。

3人での共同経営。

以前、【創業メンバーとの始まり】というタイトルのブログでも書いたが、ビジネススキルで言えば、私と内村に対して鈴木は明らかに劣っていた。

そんな鈴木のビジネスキルを上げるため、内村はこの一ヶ月、鈴木のために時間を使ってきた。

その勉強会によって、鈴木の中で不安が大きくなり、やがて楽しさが消えたと言っていたと。

時間的なことがあり、ほぼ内村に任せていたが、私は残り時間を考えれば内村の行動は、むしろ間違っていなかったと思う。

鈴木自身もこのままでは厳しいことは分かっていると思っていたし、私と内村だって足りない部分だらけだったのに。

とりあえず、私は内村から場を作ったこと自体に疑問は残っていたが、明日3人で話し合うということになった。

時間を無駄にしないためにも結論を早く出すために。

内村は、私達二人が鈴木の居場所、存在価値を示せば、まだ鈴木の気持ちが変わる可能性はある。

そして鈴木の気持ちが変わるなら、3人で起業したいと言った。

私は鈴木に会っていなかったこともあり、上記のような内村の考えは持っていなかった。

リスクを超えるモノ

私が思っていたことはまず、結婚は義務ではない。

このタイミングで結婚を決意し、その決意によって起業への思いが不安に変わるなら、そもそも起業を本気で考えていたのか?という疑問になっていた。

「子供を育てていかなければならないからこそ、今まで以上に頑張っていこう!」私ならそう思うと思っていた。

そして何より、鈴木がメールの中で「リスク」という言葉を使っていたことにショックを受けていた。

リスクがあることは私も内村も、そして鈴木も分かっていると思っていた。

もちろん今までもリスクの話はしてきたし、そのリスクを超えるモノがあったからこそ、起業しようと思っていたはずだった。

必ず成功するとは信じていたが、明日鈴木にそれを約束することは出来ない。

結局内村と私の考えは一致することはなく、明日3人で話し、答えを出そうと決め、お互い低いテンションで別れた後、鈴木のこと、地元のこと、友人としての関係、会社としての最善。

とにかく色んなことを考えた。

気づいたら朝が来ていた。

毎週一回の恒例ミーティング。

本当ならそこで事業内容を最終決定し、新しい一歩を踏み出す日になるはずだった。

この夜内村が「ミーティングがある土曜はいつも楽しみだったのに、こんな気分で迎える土曜は動き始めてから初めてだった」と言っていたが、私もミーティング場所に向かう車中、どんな音楽を聞きながら着いたのか覚えていない。

一夜明け

2009年10月31日(土)、最後に鈴木が着いた後、一瞬の沈黙の後に、まず私が何よりも聞きたかったことを聞いた。

友達関係も辞めるつもりなのかということ。

「…それは思ってない」

その言葉を確認した後に、昨日のメールという選択、今日の場を内村が作ったことなど、私が腑に落ちないと思ったことをぶつけた。

そして、鈴木の口から今思っていることを話してもらった。

結婚は今回参画を断念した、きっかけに過ぎないことの説明の後

「今の会社で働いていれば毎月給料が振り込まれる安定を失うことが怖い」

「一ヶ月前位から二人が友達ではなく上司みたいな存在になっていた」

「ミーティングに来ることが怖くなっていた」

「メールを見るのも怖くなった」

「やならくちゃいけないということを理解はしていたが気持ちがついていかなかった」

「二人に追いつくことの難しさを真剣に勉強し始めてからやっと分かった」等々。

そして、内村が少しの可能性を信じていたことに関しても、自分の居場所、存在価値が見出せたとしても、リスクに対する不安は消えないと。

広がっていた

心が痛かった。

上述した【創業メンバーとの始まり】というタイトルのブログにも書いたが、私の中で元々鈴木との起業は考えていなかった。

ただ、この時にはもう、鈴木がいなくなることなど考えられなかった。

一方で、鈴木の根本的な仕事に対する考えや、物事の考え方が、私と内村とは違っていたことにもこの時改めて気づいた。

その後は普通に話した。

起業とは関係のないことや、これからは部外者と呼ぶ等を笑って話した。

それが作り笑いだったのかは覚えていない。

鈴木が必要だった。

ワードさえもままならない男だったが、鈴木が必要だった。

それは友達だからではなく、鈴木がいることによって私の中で、理想はますます広がっていた。

私の中で鈴木の居場所は見えていた。

ただ、それを伝えるのは早いと思っていた。

その居場所に高度なPCスキルは必要なかったが、スキルは上げてほしかった。

私だって色んなことを今も勉強し続けている。

そして多くの知識も得て欲しかった。

その中で、私と内村の考えに賛同するのではなく、鈴木なりの考えを持って欲しかった。

共同経営を決意してから一年近くが経っても、なかなか上がってこない意欲と結果に、飲みの席で叱咤激励をしたこともあった。

リスクや不安に打ち勝つには最低限、自信と夢が必要だと思う。

その自信は自ら得るしかないと思う。

ただ鈴木が自信を得るまで走ることが出来なかったのは、自信を得れなかったのは、私自身に大きな理由があったと思う。

鈴木から起業をリアルに想像出来たのが、約一ヶ月前という言葉があったように、私が鈴木に見せることが出来なかったのだと思う。

努力する意味を。

努力したその先を。

リスクに負けない夢を。

成功を手にするその日を。

そして何より、3人で起業することの意味を。

つよがり

最後に、どうしても言いたかった。

この先の内村と自分自身のために言いたかった。

つよがりだったのかもしれないが、鈴木に「俺はお前を後悔させるように頑張るよ」と言った。

昨日まで同志と思っていた男に、こんな言葉をかけることになったことがたまらなく悲しかった。

そして、本当は自分自身が立ち止まったことを感じていた。

鈴木が帰った後、内村と二人で話した。

鈴木が抜けることには二人とも納得していたが、そんなことではない何かに気分は落ちていた。

二人から三人ではなく、三人から二人になった席はやたらと広く感じた。

「よし、切り替えて二人で頑張っていこう」

そんな言葉を言おうと思えば言えたが、言おうとは思わなかった。

ただ、鈴木が帰った後、大切な友人の中に、内村がいたことが有り難いことなのだと感じた。

もしかしたら、鈴木の考えが普通ってやつで、私と内村の考えが変わっているのかもとも思った。

どの位の時間があれば答えが出るのかは分らなかったが、一週間互いに考えようということになった。

何を考えるかは分らなかったが。

ただ一つ言えることは、それは起業をするかしないかということではないとだけは言える。

起業への気持ちは互いに消えていない。

とにかくこの一週間、まず私達二人がやらなければいけないことは、今日の事実をしっかりと受け入れるということだと思う。

そして、地元の仲間である私達三人が共同経営を決意してから、この先どんなことがあっても、地元の他の仲間に迷惑だけはかけないと心がけていた。

それを守るためにも、しっかりと整理したい。

そして、このブログをしばらく休ませて頂きたい。

このブログは数人にしか教えていないため、別に誰も困らないだろうが、もし私が面識がない方で見て下さっている方がいたのなら、その方々に伝えさせて頂く。

今は来週の土曜まで、ブログよりもしなければならないことがる。

そしてブログに何を書けばいいのかが分からない。

来週の土曜に内村と何らかの答えを出せたらと思っている。

その結果は、このブログに書こうと思っている。

それだって事実だ

追伸、今内村に電話した。

寝れなかったと言っていた。

そして今、このブログを見返していたと。

「鈴木に向けた言葉が多々あるよね」

そうも言っていた。

事実、鈴木をいつも意識してこのブログを書いていた。

ショックが無いなどという嘘を言うつもりはない。

けど二人で話すと、気持ちは前向きになる。

変えられない事実よりも、変えられる未来を見つめたい。

そして、私には夢がある。

叶えたい理由がある。

そして内村という最高のパートナーがいる。

それだって事実だ。